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#7「食品、添加物等の規格基準に定めるサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌の試験法」について(2015年11月号)

今回は、平成27年7月29日付で改正された「食品、添加物等の規格基準に定めるサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌の試験法」についてお話します。

☆☆サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌試験法改正の経緯☆☆
食中毒菌であるサルモネラ属菌は、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品(加熱後包装)の成分規格において、陰性でなければならないと定められています。これまでの規制対象のサルモネラ属菌は、「グラム陰性の無芽胞性の桿菌であって、アセトイン陰性、リジン陽性、硫化水素陽性及びONPG陰性で、ブドウ糖を分解し、乳糖及び白糖を分解しない、運動性を有する通性嫌気性菌」に限定されていました。
一方、サルモネラ属菌は、一般に硫化水素産生性を示しますが、近年、数は少ないものの硫化水素非産生などの非定型のサルモネラ属菌による食中毒が報告され、それらも検出できる試験法の開発が必要となっていました。2002年にISO法試験法が策定されたことから、ISO法との互換性をもった試験法の検討が進められ、厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進事業)「食品中の微生物試験法及びその妥当性評価に関する研究」(研究代表者:五十君靜信)として、ISO6579:2002との比較のための共同試験も行われました。共同試験には13の試験機関が参加し、食肉科研も加わりました。
サルモネラ属菌の規制対象を変更することについて、食品安全委員会の食品健康影響評価の結果、サルモネラ属菌の範囲が広がることによりサルモネラ属菌による食中毒の発生防止がより図られるとの回答を受け、告示から規制対象が削除されました。同時に、試験法についても妥当性確認がなされた方法に改正されました。
また、黄色ブドウ球菌の試験法についてもサルモネラ属菌試験法と同様に、国際的整合性を図る観点等から新たな試験法に改正されました。

☆☆サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌試験法のポイント☆☆
今年9月に食肉科研が開催した品質管理担当者講習会においても報告いたしましたが、改正されたサルモネラ属菌試験法は、緩衝ペプトン水で増菌後、さらに2種類の液体培地で増菌培養し、性質の異なる2種類の分離培地(硫化水素産生性で検出する培地と硫化水素産生性に関係なくサルモネラ属菌を検出する培地)にそれぞれ塗抹します。したがって1つのサンプルから4枚の分離培地の結果が得られます。疑わしいときは、最終的にO抗原による血清型別試験により判定します。黄色ブドウ球菌試験法における分離培地は、ISO6888-1にあるベアードパーカー寒天培地が採用され、その代替培地として我が国で従来から広く用いられている3%卵黄加マンニット食塩寒天培地を使用することができます。疑わしい集落は、純培養を行った後、コアグラーゼ試験等で性状を確認し同定します。

☆☆食肉科研の対応☆☆
当研究所では、サルモネラ属菌の共同試験に参加した経験を踏まえ、硫化水素非産生性の株を含めた複数のサルモネラ菌株を用いた培地の比較試験を行った上で、すでに新たな試験法に対応しております。検査の信頼性確保のため、外部精度管理調査に参加し、内部精度管理も定期的に行っております。黄色ブドウ球菌につきましても同様に対応しております。どうぞ安心して当研究所に検査をご依頼ください。また、皆様方の工場で実施されている精度管理につきまして、お困りの点などがございましたら、お気軽に微生物部(電話:03-6450-3345)にお問い合わせください。
文責:事業統括部微生物部 中島誠人