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#3 食肉製品に発色剤として用いられる食品添加物「亜硝酸塩」について(2015年7月号)

シリーズ3回目は、食肉製品に発色剤として用いられる食品添加物「亜硝酸塩」についてお話します。

☆☆食肉製品における「亜硝酸根」の成分規格☆☆
食肉製品には、発色剤として亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの3種類の使用が認められています。硝酸ナトリウム、硝酸カリウムは、細菌などの働きによって亜硝酸に還元され、亜硝酸はさらに一酸化窒素になって、発色剤としての効果を発揮します。この亜硝酸塩は、食品衛生法の食肉製品の成分規格で、亜硝酸根(イオン)として「製品1kg中に0.070gを超えて含有するものであってはならない。」とされています。これは、この残存量で十分発色効果が期待できるためです。亜硝酸塩は食肉中で消費されて減少することから、「使用量」ではなく「残存量」で制限されています。

☆☆「亜硝酸ナトリウム」の効果☆☆
✔亜硝酸塩から生じた一酸化窒素と食肉中のミオグロビンが結合し、その後の加熱により鮮やかな桃赤色を発現します。
✔微生物、特にボツリヌス菌の増殖を抑制します。
✔原料肉特有の獣臭さを消し、食肉製品特有の風味である塩漬フレーバーを醸成します。熟成風味の発現には一定の熟成期間が必要です。豚ロース肉に塩漬剤を添加し、4日間及び7日間塩漬熟成、加熱し、塩漬フレーバーを官能検査で比較した結果、7日間塩漬熟成したものは4日間のものよりも嗜好性が高いことが明らかとなっています。これが特定JAS規格において熟成ハム類の塩漬期間を7日間以上に設定した根拠となっています。
✔食肉を長期に保存すると、脂質が酸化されてフレーバーの劣化が起きますが、亜硝酸塩はそれを抑制する働きがあります。

☆☆亜硝酸根残存量を減少させる要因は?☆☆
亜硝酸ナトリウムの添加量は、亜硝酸根残存量の減少に関わる要因を踏まえて決定します。その要因としてよく知られていることは、塩漬期間を長くするとことが挙げられます。他には、アスコルビン酸を併用すると、アスコルビン酸が亜硝酸を還元し一酸化窒素に変えることを促進するため残存量は減少します。食塩やグルタミン酸ナトリウムは、アスコルビン酸が共存すると亜硝酸の分解を促進しますし、加熱処理条件を強くすると残存量は減少します。製造工場における亜硝酸ナトリウムの管理としては、正確な計量のために秤や分銅を校正すること、決められた塩漬の温度・期間を守ること、食肉や氷水の正確な計量も大事です。発色剤の過剰使用を防ぐためには基準値以下の使用とすればよいわけですが、亜硝酸ナトリウムの効果を発揮させるためには、過少使用も考慮した管理が必要ですね。

☆☆「亜硝酸根」の検査☆☆
当研究所は、平成27年3月に「食肉製品の亜硝酸イオン分析」について、ペリージョンソンラボラトリーアクレディテーションインクより、国際規格であるISO/IEC17025:2005の試験所認定を受けました。内部精度管理、技能試験などに裏付けされた信頼性の高い試験結果を提供することができます。第三者の証明書が必要な時や塩漬における亜硝酸の消長データを取りたい場合、亜硝酸テスターによる検査結果の検証として、食肉製品検査の専門家である当研究所をぜひご利用ください。


文責:事業統括部理化学部 吉田由香