科研コラム
#11「ノロウイルス」による感染性胃腸炎は例年12月が発生のピークです(2016年3月号)
「ノロウイルス」による感染性胃腸炎は、例年12月に発生のピークになる傾向があります。この冬、これまで検出例の少ない遺伝子型(GⅡ.17)のノロウイルスによる流行が拡大する可能性が指摘されていました。
厚生労働省は、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が急増するシーズンに備え、平成27年10月23日付で「感染性胃腸炎の流行に伴うノロウイルスの感染予防対策の啓発について」を発出し、手洗いの徹底、糞便・吐物の適切な処理等の感染予防対策の啓発に努めるよう指導されています。
細菌による食中毒予防の3原則は、「つけない」、「増やさない」、「排除する」ですが、ノロウイルスの場合は、「持ち込まない」、「拡げない」、「加熱する」、「つけない」ことが重要であると言われています。そのためには、従業員自らが「不顕性感染者(感染していても症状を示さない)」である可能性を自覚した行動が必要です。不顕性感染者でも糞便中にウイルス粒子を排出するのです。ノロウイルスの感染者の糞便は1グラム当たり数億個ものウイルスを含み、一方、わずかに10~100個のウイルスで十分に感染が成立します。このことは、単純計算で、便0.1グラムで数百万人もの感染を起こし得ることになります。
過去の事例から学びましょう。
2014年1月15日、浜松市内の小学校等において患者数1,271名の大規模食中毒が発生しました。原因食品は、パン製造施設から納入され学校給食で提供された食パンと断定され、病因物質としてノロウイルスGIIが検出されました。これは浜松市内では患者数が過去最多、静岡県内でも過去3番目に多い事例でした。
この施設ではスライスした食パン1枚1枚を手に取り、異物混入を確認する検品作業を行っていました。この作業を、ノロウイルスを保有していた従業員(不顕性感染者)が行ったことにより、大量のパンが汚染されてしまいました。
この従業員は、使い捨て手袋を使用していました。ということは、使い捨て手袋にウイルスが付着していたことになります。この事例では、トイレ使用後に温水が出ないため十分な時間をかけて手洗いを行わなかったことにより、手又は作業着にウイルスが残存し、使い捨て手袋にウイルスが付着したと推察されています。
この事例から、不顕性感染については注意が必要であること、不顕性感染者がいることを前提とした食中毒防止対策を徹底していくことが重要であることが言えます。また、手袋をするからと安心して、手洗いが不十分にならないようにすることが必要ですね。
平成25年10月30日に開催された厚生労働省薬事・食品衛生審議会食中毒部会では、次のような「手洗いの時間・回数による効果」が報告されています。
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手洗いの方法 残存ウイルス数(残存率)*
手洗いなし 約1,000,000個
流水で15秒手洗い 約10,000個(約1%)
ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ 数百個(約0.01%)
ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ 数十個(約0.001%)
ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎを2回繰り返す 約数個(約0.0001%)
*:手洗いなしと比較した場合
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国立感染症研究所は2月16日、感染症発生動向調査を更新しました。それによると、第5週(2/1~2/7)に全国の定点医療機関から報告があったノロウイルスによる感染性胃腸炎の患者数は23,850人(先週比マイナス665人)、定点当たり報告数は7.55(流行警報発表基準は20)で、2週連続で減少しました。都道府県別では、愛媛県(14.41)、熊本県(14.24)、大分県(13.94)、徳島県(13)、宮崎県(12.5)の定点あたり報告数が高くなっています。警報レベルの都道府県はなく、全国的にノロウイルスの予防対策が取られたこともあり、幸いなことに今のところ大流行の兆しは見えません。
ノロウイルスによる食中毒の原因を調べてみますと、弁当、寿司など既に食べられる状態になった食品に人の手が触れることにより発生しています。食肉製品で見ますと、加熱殺菌後に手により小分け包装する工程などが該当します。
食品製造施設では油断することなく対策を取られていることと思いますが、改めてノロウイルスによる食中毒の発生予防として、すべての従事者不顕性感染者であるとの前提をした上で、次の観点から確認してみませんか。
✔ 使い捨て手袋の交換の頻度は具体的に決めていますか。
✔ 手袋を取り出すときに、未使用の指先部分を触っていませんか。
✔ 歩きながら使い捨て手袋を外していませんか。
✔ 手洗い設備の水流が弱いことはありませんか。
✔ ハンドソープの量は十分ですか。
✔ トイレでは、作業着(下)の裾が床面に触れることはありませんか。
✔ 普段からノロウイルスに感染しないように従事者の健康管理は十分ですか。
厚生労働省は、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が急増するシーズンに備え、平成27年10月23日付で「感染性胃腸炎の流行に伴うノロウイルスの感染予防対策の啓発について」を発出し、手洗いの徹底、糞便・吐物の適切な処理等の感染予防対策の啓発に努めるよう指導されています。
細菌による食中毒予防の3原則は、「つけない」、「増やさない」、「排除する」ですが、ノロウイルスの場合は、「持ち込まない」、「拡げない」、「加熱する」、「つけない」ことが重要であると言われています。そのためには、従業員自らが「不顕性感染者(感染していても症状を示さない)」である可能性を自覚した行動が必要です。不顕性感染者でも糞便中にウイルス粒子を排出するのです。ノロウイルスの感染者の糞便は1グラム当たり数億個ものウイルスを含み、一方、わずかに10~100個のウイルスで十分に感染が成立します。このことは、単純計算で、便0.1グラムで数百万人もの感染を起こし得ることになります。
過去の事例から学びましょう。
2014年1月15日、浜松市内の小学校等において患者数1,271名の大規模食中毒が発生しました。原因食品は、パン製造施設から納入され学校給食で提供された食パンと断定され、病因物質としてノロウイルスGIIが検出されました。これは浜松市内では患者数が過去最多、静岡県内でも過去3番目に多い事例でした。
この施設ではスライスした食パン1枚1枚を手に取り、異物混入を確認する検品作業を行っていました。この作業を、ノロウイルスを保有していた従業員(不顕性感染者)が行ったことにより、大量のパンが汚染されてしまいました。
この従業員は、使い捨て手袋を使用していました。ということは、使い捨て手袋にウイルスが付着していたことになります。この事例では、トイレ使用後に温水が出ないため十分な時間をかけて手洗いを行わなかったことにより、手又は作業着にウイルスが残存し、使い捨て手袋にウイルスが付着したと推察されています。
この事例から、不顕性感染については注意が必要であること、不顕性感染者がいることを前提とした食中毒防止対策を徹底していくことが重要であることが言えます。また、手袋をするからと安心して、手洗いが不十分にならないようにすることが必要ですね。
平成25年10月30日に開催された厚生労働省薬事・食品衛生審議会食中毒部会では、次のような「手洗いの時間・回数による効果」が報告されています。
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手洗いの方法 残存ウイルス数(残存率)*
手洗いなし 約1,000,000個
流水で15秒手洗い 約10,000個(約1%)
ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ 数百個(約0.01%)
ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ 数十個(約0.001%)
ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎを2回繰り返す 約数個(約0.0001%)
*:手洗いなしと比較した場合
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国立感染症研究所は2月16日、感染症発生動向調査を更新しました。それによると、第5週(2/1~2/7)に全国の定点医療機関から報告があったノロウイルスによる感染性胃腸炎の患者数は23,850人(先週比マイナス665人)、定点当たり報告数は7.55(流行警報発表基準は20)で、2週連続で減少しました。都道府県別では、愛媛県(14.41)、熊本県(14.24)、大分県(13.94)、徳島県(13)、宮崎県(12.5)の定点あたり報告数が高くなっています。警報レベルの都道府県はなく、全国的にノロウイルスの予防対策が取られたこともあり、幸いなことに今のところ大流行の兆しは見えません。
ノロウイルスによる食中毒の原因を調べてみますと、弁当、寿司など既に食べられる状態になった食品に人の手が触れることにより発生しています。食肉製品で見ますと、加熱殺菌後に手により小分け包装する工程などが該当します。
食品製造施設では油断することなく対策を取られていることと思いますが、改めてノロウイルスによる食中毒の発生予防として、すべての従事者不顕性感染者であるとの前提をした上で、次の観点から確認してみませんか。
✔ 使い捨て手袋の交換の頻度は具体的に決めていますか。
✔ 手袋を取り出すときに、未使用の指先部分を触っていませんか。
✔ 歩きながら使い捨て手袋を外していませんか。
✔ 手洗い設備の水流が弱いことはありませんか。
✔ ハンドソープの量は十分ですか。
✔ トイレでは、作業着(下)の裾が床面に触れることはありませんか。
✔ 普段からノロウイルスに感染しないように従事者の健康管理は十分ですか。