科研コラム
#15 HACCP義務化を意識して(2016年7月号)
☆HACCP義務化を意識して☆
厚生労働省は、食品衛生管理の国際標準である HACCP の普及により、安全性の高い食品の生産性の向上が期待され、食品の製造、加工、調理等における HACCP による衛生管理については、 コーデックスにおいてガイドラインが示され、国、地方自治体、民間機関などにより普及に取り組んできたが、欧米等先進国をはじめとした諸外国では、 HACCP に基づく衛生管理の制度化が進んでいる。このような状況を踏まえ、我が国においても従来の画一的な衛生管理の基準を見直し、 HACCP の制度化を進め、異物混入や食中毒の防止など食品の安全性の向上を図る必要があることから、HACCP の制度化による我が国の食品衛生管理の国際標準化を進めるための制度の枠組み等について検討が必要として、本年3月7日、第1回「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」を開催し、現在まで4回開催され、HACCPの導入の義務化が検討されている。
そこで、我が国においてHACCP方式による食品衛生管理を導入した経緯等を振り返ってみたい。
平成7年、食品衛生法の改正により、法第13条で、HACCPを用いた衛生管理を行う総合衛生管理製造過程について、厚生労働大臣が営業者に承認を与えることができる旨の規定が設けられ、その対象となる食品として、牛乳等、脱脂粉乳等、清涼飲料水、食肉製品、魚肉練り製品及び容器包装詰加圧加熱殺菌食品が規定された。
その当時、食品産業がHACCPを用いた衛生管理を必要としていた背景をみると
(1)出来上がり製品の抜き取り検査による従来の品質管理から、製造過程の衛生管理によ
る全商品の均質な安全性の保証をする必要が生じてきたこと。
(2)製造物責任法の施行に当たり、自己の責任の有無について立証するために、HACCPによる食品の安全確保に関する記録が不可欠となってきたこと。
(3)製造技術の進歩に対応するため、例えば、新たな殺菌技術を開発した場合、食品衛生法に基づく規格基準の改正では時間がかかるため、その新しい製造技術について、安全性を確認の上承認をすることにより認めるという規制の緩和が図れること。
(4)国際競争力というと、食品を輸出する場合を想定されるが、HACCPにより管理された食品が、先進国はもとより発展途上国から輸入されてくることにより、国内製品との安全性の競合が予測され、国内マーケットにおける国際競争力が求められてきたこと。
また、HACCPを導入する上で企業においては、次の点に留意することが重要とされた。
(1) 導入の目的は、厚生労働大臣の承認を得ることではなく、消費者に、より安全で、より衛生的なものを提供すること
(2)経営のトップが導入すると言う強い決断がなければ成果が得られないこと。
(3)職員はトップからの指示により、やらされるのではなく、自らの意志で行うという意識改革とその決意を継続するという全職員の強固な意志が必要であること
(4)食品の安全性確保は、あくまで、経営者の自己責任であり、特に、自主管理のために必要な人材の育成が急務であること。
これらは現在でも変わらず、食品事業者等関係者が心すべきことと思われる。
HACCP方式による食品衛生管理を食品事業者に広げていくためには、CCPについて、生
産から消費にいたる、どの工程に責任を持たすのかが重要となってくる。例えば、よく加熱してから食べるというようなことについては、消費者がCCPを担うことも含めて、無理のない形で中小企業に導入されていくことを切に願うものである。
一般社団法人食肉科学技術研究所
理事長 森田邦雄
厚生労働省は、食品衛生管理の国際標準である HACCP の普及により、安全性の高い食品の生産性の向上が期待され、食品の製造、加工、調理等における HACCP による衛生管理については、 コーデックスにおいてガイドラインが示され、国、地方自治体、民間機関などにより普及に取り組んできたが、欧米等先進国をはじめとした諸外国では、 HACCP に基づく衛生管理の制度化が進んでいる。このような状況を踏まえ、我が国においても従来の画一的な衛生管理の基準を見直し、 HACCP の制度化を進め、異物混入や食中毒の防止など食品の安全性の向上を図る必要があることから、HACCP の制度化による我が国の食品衛生管理の国際標準化を進めるための制度の枠組み等について検討が必要として、本年3月7日、第1回「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」を開催し、現在まで4回開催され、HACCPの導入の義務化が検討されている。
そこで、我が国においてHACCP方式による食品衛生管理を導入した経緯等を振り返ってみたい。
平成7年、食品衛生法の改正により、法第13条で、HACCPを用いた衛生管理を行う総合衛生管理製造過程について、厚生労働大臣が営業者に承認を与えることができる旨の規定が設けられ、その対象となる食品として、牛乳等、脱脂粉乳等、清涼飲料水、食肉製品、魚肉練り製品及び容器包装詰加圧加熱殺菌食品が規定された。
その当時、食品産業がHACCPを用いた衛生管理を必要としていた背景をみると
(1)出来上がり製品の抜き取り検査による従来の品質管理から、製造過程の衛生管理によ
る全商品の均質な安全性の保証をする必要が生じてきたこと。
(2)製造物責任法の施行に当たり、自己の責任の有無について立証するために、HACCPによる食品の安全確保に関する記録が不可欠となってきたこと。
(3)製造技術の進歩に対応するため、例えば、新たな殺菌技術を開発した場合、食品衛生法に基づく規格基準の改正では時間がかかるため、その新しい製造技術について、安全性を確認の上承認をすることにより認めるという規制の緩和が図れること。
(4)国際競争力というと、食品を輸出する場合を想定されるが、HACCPにより管理された食品が、先進国はもとより発展途上国から輸入されてくることにより、国内製品との安全性の競合が予測され、国内マーケットにおける国際競争力が求められてきたこと。
また、HACCPを導入する上で企業においては、次の点に留意することが重要とされた。
(1) 導入の目的は、厚生労働大臣の承認を得ることではなく、消費者に、より安全で、より衛生的なものを提供すること
(2)経営のトップが導入すると言う強い決断がなければ成果が得られないこと。
(3)職員はトップからの指示により、やらされるのではなく、自らの意志で行うという意識改革とその決意を継続するという全職員の強固な意志が必要であること
(4)食品の安全性確保は、あくまで、経営者の自己責任であり、特に、自主管理のために必要な人材の育成が急務であること。
これらは現在でも変わらず、食品事業者等関係者が心すべきことと思われる。
HACCP方式による食品衛生管理を食品事業者に広げていくためには、CCPについて、生
産から消費にいたる、どの工程に責任を持たすのかが重要となってくる。例えば、よく加熱してから食べるというようなことについては、消費者がCCPを担うことも含めて、無理のない形で中小企業に導入されていくことを切に願うものである。
一般社団法人食肉科学技術研究所
理事長 森田邦雄