科研コラム
#20 加工食品の原料原産地表示制度について(2017年1月号)
昨年11月29日、消費者庁及び農林水産省は加工食品の原料原産地表示制度について、消費者庁と農林水産省が共同で開催していた「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」の検討結果について、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」として公表した。その内容については本誌2016。12月号で検討会報告案ということで紹介されたところである。今回の公表において検討会報告案と変更された主な点は次のとおりである。
(1)義務表示の対象となる加工食品の冒頭の表現が次のとおり具体的となった。
「原料原産地表示は、商品選択の際の重要な情報であり、国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とすることが適当である。」
(2)4 今後の加工食品の原料原産地表示の対象、方法(3)義務表示の例外に次の文が加えられた。
「なお、「大括り表示」は認めるが「可能性表示」及び「製造地表示」の代わりに「原産地不特定」とする提案や、「国別重量順表示」が難しい場合に原産地を表示しないとする提案については、消費者にできる限り充実した産地情報を提供する制度とする観点から適当でないとされた。」
これまでの経緯を振り返ってみると、消費者庁と農林水産省は、加工食品の原料原産地表示について、「消費者基本計画」(平成27年3月24日閣議決定)、「食料・農業・農村基本計画」(平成27年3月31日閣議決定)、及び「総合的なTPP 関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)における、食の安全・安心に関する施策として、「原料原産地表示について、実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行う」等とされていることを踏まえ、平成28年1月、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」を設置し検討してきたものである。
更に、検討会の設置後、平成28年3月、自由民主党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームは、「すべての加工食品について、実行可能な原料原産地を表示し、国民の日々の選択が、日本の「食と農」を支える社会をつくる」と結論を出し、「日本再興戦略 2016」(平成 28 年6月2日閣議決定)において、「消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保に資するよう、原料原産地表示について、全ての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討を進める」とされた。
これらの前提条件のもとで検討が進められて来たもので、すでに紹介された通り、対象原材料の産地について、国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを原則とし、例外として「大括り表示」、「可能性表示」及び「製造地表示」を認めた。
この取りまとめに対して、一部の消費者団体等から、「可能性表示」及び中間加工原材料表示である「製造地表示」に反対の声がある。食品表示法第1条の法律の目的の、食品に関する表示が自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保に関し重要な役割を果たしていること、また、同法第3条の基本理念では、販売の用に供する食品に関する表示の適正を確保するための施策は、消費者基本法第2条第1項に規定する消費者政策の一環として、消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保されることが消費者の権利であることを尊重することが規定されており、これらの観点から反対しているものと思われる。
しかしながら、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への対応から始まった政府、与党の検討方向の大枠である「すべての加工食品を対象とし、実行可能性を確保すること」並びに国内生産者及び消費者の要望を踏まえると、今回の取りまとめの内容とならざるをえないのではないだろうか。
なお、原料原産地表示の違反に対し、法令上は、直ちに食品表示法第19条を適用して告発することが規定されているが、その運用にあたっては慎重に対処することを検討していく必要があるのではないかと思われる。
(参考:食品表示法第19条 食品表示基準において表示されるべきこととされている原産地(原材料の原産地を含む。)について虚偽の表示がされた食品の販売をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する)
消費者庁は、この報告を受け、原料原産地表示を義務付けるための食品表示法に基づく食品表示基準(内閣府令)の改正を平成29年夏に予定し、経過措置については、食品表示基準の経過措置が終了する平成32年3月末とするか、更に延長するか今後検討されるものと思われる。
また、パブリックコメントの募集は、食品表示基準(案)となった時点で行うとされており、1月以降になるものと思われる。
原料原産地表示については、食肉製品を製造する業界として、今後、消費者の求めるものは何なのかを十分勘案して適切に対応していく必要がある。
文責:理事長 森田邦雄
(1)義務表示の対象となる加工食品の冒頭の表現が次のとおり具体的となった。
「原料原産地表示は、商品選択の際の重要な情報であり、国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とすることが適当である。」
(2)4 今後の加工食品の原料原産地表示の対象、方法(3)義務表示の例外に次の文が加えられた。
「なお、「大括り表示」は認めるが「可能性表示」及び「製造地表示」の代わりに「原産地不特定」とする提案や、「国別重量順表示」が難しい場合に原産地を表示しないとする提案については、消費者にできる限り充実した産地情報を提供する制度とする観点から適当でないとされた。」
これまでの経緯を振り返ってみると、消費者庁と農林水産省は、加工食品の原料原産地表示について、「消費者基本計画」(平成27年3月24日閣議決定)、「食料・農業・農村基本計画」(平成27年3月31日閣議決定)、及び「総合的なTPP 関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)における、食の安全・安心に関する施策として、「原料原産地表示について、実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行う」等とされていることを踏まえ、平成28年1月、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」を設置し検討してきたものである。
更に、検討会の設置後、平成28年3月、自由民主党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームは、「すべての加工食品について、実行可能な原料原産地を表示し、国民の日々の選択が、日本の「食と農」を支える社会をつくる」と結論を出し、「日本再興戦略 2016」(平成 28 年6月2日閣議決定)において、「消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保に資するよう、原料原産地表示について、全ての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討を進める」とされた。
これらの前提条件のもとで検討が進められて来たもので、すでに紹介された通り、対象原材料の産地について、国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを原則とし、例外として「大括り表示」、「可能性表示」及び「製造地表示」を認めた。
この取りまとめに対して、一部の消費者団体等から、「可能性表示」及び中間加工原材料表示である「製造地表示」に反対の声がある。食品表示法第1条の法律の目的の、食品に関する表示が自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保に関し重要な役割を果たしていること、また、同法第3条の基本理念では、販売の用に供する食品に関する表示の適正を確保するための施策は、消費者基本法第2条第1項に規定する消費者政策の一環として、消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保されることが消費者の権利であることを尊重することが規定されており、これらの観点から反対しているものと思われる。
しかしながら、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への対応から始まった政府、与党の検討方向の大枠である「すべての加工食品を対象とし、実行可能性を確保すること」並びに国内生産者及び消費者の要望を踏まえると、今回の取りまとめの内容とならざるをえないのではないだろうか。
なお、原料原産地表示の違反に対し、法令上は、直ちに食品表示法第19条を適用して告発することが規定されているが、その運用にあたっては慎重に対処することを検討していく必要があるのではないかと思われる。
(参考:食品表示法第19条 食品表示基準において表示されるべきこととされている原産地(原材料の原産地を含む。)について虚偽の表示がされた食品の販売をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する)
消費者庁は、この報告を受け、原料原産地表示を義務付けるための食品表示法に基づく食品表示基準(内閣府令)の改正を平成29年夏に予定し、経過措置については、食品表示基準の経過措置が終了する平成32年3月末とするか、更に延長するか今後検討されるものと思われる。
また、パブリックコメントの募集は、食品表示基準(案)となった時点で行うとされており、1月以降になるものと思われる。
原料原産地表示については、食肉製品を製造する業界として、今後、消費者の求めるものは何なのかを十分勘案して適切に対応していく必要がある。
文責:理事長 森田邦雄